大阪市大・木野茂研究室へようこそ


このページは2010年度までのものです。
現在はコチラへ!


2010年度の開講科目

於・大阪市立大学
 (いずれも全学共通科目、学部学年に関係なく受講できる一般教養科目です)

 「科学と社会」前期木曜4限2:40〜4:10(於・杉本キャンパス内の旧教養地区にある全学共通教育棟)

☆ 「ドキュメンタリー 環境と生命」
後期水曜4限( 同 上 )


於・立命館大学
 (教養科目。いろんな学部の学生が混じって受講しないのが、マンモス私大の特徴のようです)
☆ 「科学的な見方・考え方」(前期金曜3限、産業社会学部・映像学部向け)
☆ 「現代環境論J」(
前期金曜5限4:20〜5:50、法学部・国際関係学部向け)
☆ 「現代環境論Z」(前期オンデマンド科目、衣笠・びわこ・アジア太平洋大学向けネット科目

☆ 「ドキュメンタリー 環境と生命」(
後期金曜3限、衣笠キャンパス6学部向け特殊講義)
☆ 「現代環境論L」(
後期金曜5限4:20〜5:50、文学部向け)
☆ 「教養ゼミ」(
後期火曜4限2:40〜4:10、衣笠向け共通科目。)


★☆テキストは共通『新版 環境と人間〜公害に学ぶ』(東京教学社)♪




 立命館では、オンラインシラバスが公開されています。ぜひ、ご覧ください。




立命館「現代環境論L」(金)夕方4:20〜5:50迄。場所は清心館508教室。階段を下りての地下1階です。

 清心館とは、地図で言うと清心門という文字の上っかわの建物です。1階に文学部事務室やロビー、自販機があります。

2008年
9/26 アスベスト
10/3 公害の原点・水俣病
10/10 水俣病は終わっていない
10/17 ゲスト:二木洋子さん「環境問題と行政」 
10/24 公害と労災職業病T/チーム分け
10/31 ゲスト:四宮充普さん「薬害を防いだ労働者」
11/7 公害と労災職業病U/準備
11/14 チーム・ディベート大会
11/21 原子力の光と影
11/28 アイリーンさん「プルトニウムと私たち」 
12/5 ゲスト:小出裕章さん「エネルギーと人間」 
12/13 ゲスト:原田正純さん「三池と水俣」
12/19 ゲスト:花井十伍さん「薬害エイズは今…」 
1/9 環境問題と差別
1/16 環境問題と専門家の役割



2005年3月末で長年お世話になった大阪市立大学を定年退職しました。
ご縁がありまして、同年7月1日付で、立命館大学の教員になりました。ポストは大学教育開発・支援センター教授です。
アスベストについての取材が続いています。対策案を整理したメモを書いてみました(05.7.26)。
京都デビュー!?? 京都新聞の「論考」に載りました(05.9.9)
後期開講「ドキュメンタリー 環境と生命」のシラバスを更新しました(05.10.10)
水俣病関西訴訟の最高裁判決からちょうど1年…(05.10.17)
アスベスト公害の地元・尼崎を抱える兵庫県の神戸新聞「編集委員インタビュー」に載りました(05.10.31)

2005年4月以降の近況をまとめました。(05.12.25)
宇井純先生の生前のご好意に感謝し、ご逝去を心からお悔やみ申し上げます(06.11.11)
大阪・心斎橋の大丸のビル側で基準の31倍のアスベストが検出(06.12.22)
市大と立命館での授業予定を掲載(07.4.25)
立命館での授業予定を掲載(07.9.7)
立命館での授業予定の変更(アイリーンさん)を反映(07.10.18)
2008年4月1日付で、立命館大学での所属が変わりました。共通教育推進機構の教授です。研究室や電話は不変。(08.4.12)

立命館の7月11日にゲストを招聘。金正美さん! 市大の後期を水曜に修正。(08.5.3)
前期のスケジュールの位置を、少し後ろに移動させ、後期のスケジュールをアップしました。(08.8.19)

前期と後期の担当科目を載せました。スケジュールは省略(10.9.25)




大阪市大
「科学と社会」前期木曜4限2:40〜4:10(於・杉本キャンパス内の旧教養地区にある全学共通教育棟822教室)

2008年4.10 アスベスト
4.17 公害の原点・水俣病
4.24 水俣病は終わっていない
5. 1 地球環境問題/チーム分け
5. 8 (振替授業日のため休講。火曜日の授業が実施されるらしい)
5.15 二木洋子さん「環境問題と行政」個人HP(「いきいき日誌」がおもしろい)
5.22 チーム・ミーティング
5.29 チーム・ディベート大会
6. 5 花井十伍さん「薬害エイズは、今?」ご連絡はネットワーク・医療と人権HPから!
6.12 公害と労災職業病
6.19 原子力の光と影1
6.26 原子力の光と影2
7. 3 四宮充普さん「薬害を防いだ労働者」
7.10 環境問題と差別

7.17 専門家の役割

立命館大学
「現代環境論J(法学部と国際関係学部が対象)」
(金)
夕方4:20〜5:50迄。場所は衣笠の南門を出てスグの敬学館230教室。階段を下りて建物に入り直進、左奥。
地図:衣笠キャンパス

2008年
4.11 アスベスト
4.18 公害の原点・水俣病
4.25 水俣病は終わっていない
5. 2 二木洋子さん「環境問題と行政」個人HP(「いきいき日誌」がおもしろい)
5. 9 公害と労災職業病1/チーム分け
5.16 北野静雄さん「薬害を防いだ労働者」
5.23 公害と労災職業病2/準備
5.30 チーム・ディベート大会
6. 6 原子力の光と影
6.13 アイリーンさん「プルトニウムと私たち」ご連絡はグリーン・アクションHPから♪
6.20 小出裕章さん「エネルギーと人間」原子力安全研究GのHP(英語版もあります)
6.27 環境問題と差別
7. 4 花井十伍さん「薬害エイズは、今」ご連絡はネットワーク・医療と人権HPから!
7.11 金 正美さん「ハンセン病患者と出会って」
7.18 専門家の役割




立命館「現代環境論J」(金)夕方4:20〜5:50迄。場所は衣笠の南門を出てスグの敬学館230教室。階段を下りて建物に入り直進、左奥。
2007年
4/13 アスベスト
4/20 水俣病
4/27 公害と労災職業病
5/ 4 (休日・休講)
5/11 ゲスト:二木洋子さん「環境問題と行政」
5/18 チーム・ミーティング
5/25 (続)チーム・ミーティング
6/ 1 チーム・ディベート大会
6/ 8 ゲスト:花井十伍さん「薬害エイズは今・・・」
6/15 ゲスト:北野静雄さん「薬害を防いだ労働者」
6/22 原子力の光と影
6/29 小出裕章さん:エネルギーと人間
7/ 6 アイリーンさん:プルトニウムと私たち
7/13 環境問題と差別
7/20 環境問題と専門家の役割



立命館「現代環境論L」(金)夕方4:20〜5:50迄。場所は清心館508教室。階段を下りての地下1階です。

 清心館とは、地図で言うと清心門という文字の上っかわの建物です。1階に文学部事務室やロビー、自販機があります。

2007年
9/28 アスベスト
10/5 水俣病
10/12 ゲスト:花井十伍さん「薬害エイズは今・・・」 
10/19 ゲスト:二木洋子さん「環境問題と行政」 
10/26 チーム・ミーティング
11/2 (続)チーム・ミーティング
11/9 チーム・ディベート大会
11/16 ゲスト:原子力の光と影
11/23 ゲスト:原田正純さん「三池と水俣」
11/30 ゲスト:四宮充普さん「薬害を防いだ労働者」
12/7 アイリーンさん「プルトニウムと私たち」 
12/14 ゲスト:小出裕章さん「エネルギーと人間」 
12/21 公害と労災職業病
1/11 環境問題と差別
1/18 環境問題と専門家の役割


2006年12月発覚! 大阪・心斎橋の大丸のビル側で基準の31倍のアスベストが検出された問題について

 どんな問題だったかは、下記の記事3つを参考にして下さい。

心斎橋共同センタービル、基準31倍のアスベスト検出
2006年12月22日0時51分配信 読売新聞
 大阪市は21日、中央区の大丸心斎橋店などが入居する「心斎橋共同センタービルディング」で10月、竹中工務店(本社・同市)が施工したアスベスト(石綿)除去作業中に、ビルそばの大気中から基準値の31倍にあたる高濃度のアスベストを検出したと発表した。
 アスベストが吹き付けられたパネルが落下して、現場を覆うシートが約15センチ破れ、ここからアスベストが飛散したことなどが原因とみられる。基準値の数倍程度に達する例は少なくないが、専門家によると、31倍は極めて高い濃度という。
 市は、再発防止を勧告するとともに条例に基づいて業者名を公表した。現場は御堂筋に隣接した繁華街だが、市は「飛散したのは短期間で、通行人への健康被害の可能性は低い」としている。


<アスベスト>除去作業中に基準の31倍飛散 大阪のビル
2006年12月21日23時57分配信 毎日新聞
 大阪市は21日、10月に同市中央区の商業ビルで外壁のアスベスト除去作業を請け負った「竹中工務店」が、大阪府条例で定める基準の31倍のアスベストを外部に飛散させたと発表した。現在は正常値に戻っているという。同ビルは大阪・ミナミの繁華街に位置し、大丸や三菱東京UFJ銀行の支店が入っている。

<大阪>繁華街で基準を超えるアスベストが飛散
2006年12月21日20時2分配信 朝日放送
 大阪・ミナミの中心部で、アスベストを除去する工事をしていたところ、不注意で基準を超えるアスベストを飛散させていたことがわかりました。
 多くの人が行きかう大阪・御堂筋。こともあろうか、心斎橋のど真ん中で、基準を超えるアスベストが飛散していました。アスベストが飛散したのは、大丸心斎橋店や三菱東京UFJ銀行などが入るビルの壁面です。大阪市によりますと、竹中工務店が10月、壁からアスベストを取り除く工事をしていたところ、飛散を防ぐためのシートが破れ、アスベストが広がったということです。市が10月24日に周辺で測定したところ、条例で定める基準の31倍のアスベストが検出され、その2日後にも基準の2倍から3倍の量が検出されました。大阪市都市環境局は、「通行人は、吸い込んでも非常に短い期間なので、健康リスクは低いのでは」と話しています。竹中工務店は、「大変な迷惑をかけて申し訳ありません」とコメントしています。


→ 読売新聞から電話でコメントを求められたのですが、翌朝、下記のような記事になりました。

 公害問題に詳しい立命館大学大学教育開発・支援センターの木野茂教授の話
「アスベスト新法が施行されたのに、大手企業がいまだにずさんな作業を放置していたとは驚きだ。基準値を超えていた期間は短く、通行しただけで健康に悪影響が出ることはないが、発覚から二ヶ月後の発表は遅すぎる。他の除去作業への教訓や警鐘とするためにも、市も竹中工務店も迅速な広報が必要だった」(読売06.12.22社会面)


→ その翌日の読売新聞に続報がありました。

 見出しは「近畿21自治体 石綿飛散 公表せず 基準値超えても“法的根拠ない”」という記事。これについて、環境省アスベストの健康影響に関する検討会座長の内山巌雄・京大大学院工学研究科教授(都市環境工学)の話が載っています。いわく、
「自治体によって、アスベストに対する問題意識が異なる。飛散してからでは手遅れで、自治体と労働基準監督署、市民が連携して監視を強化するなど飛散防止を徹底する必要がある」(読売新聞06.12.22夕刊社会面)


→ この内山コメントについて、ひとこと言わせていただきたいのです。
「環境省の座長ともあろう人が、他人事のように言っている。自治体と労基署と市民が連携した例があったのだろうか。そもそも、法が無くても、監督官庁である環境省が自治体を指導すれば済む話である」。





2006年11月、宇井純先生の生前のご好意に感謝し、ご逝去を心からお悔やみ申し上げます。

 宇井純先生のことは、1970年の大学闘争でその名を知りましたが、以来、水俣病をはじめ公害問題の研究者としてのみならず、専門家の責任として被害者や住民の支援にも積極的に取り組まれたご活躍に私は常に勇気付けられてきました。
 1972年に亡くなった井関進君の意志を受け継ぎ、私も水俣病問題に少し関わりましたが、井関君が先生を慕った背景には専門家としての責任を実践する先生のお姿があったからだと思っています。
 私が大阪市立大学で自主講座を立ち上げてからは何度となくおいでいただき、若い学生たちに熱弁をふるっていただいたご様子は、まぶたの裏に焼き付いております。
 また、研究者は三つくらいテーマを持ちなさいと言っていただいたことも忘れられず、物理学、環境学、大学教育学と一応、先生の助言を実行でき、昨年は大学教育学会でご一緒できたことも忘れられません。
 最近は、水俣病事件研究会でお会いするたびにご健康を祈っておりましたが、このたびのご逝去の報に接し、残念でなりません。
 どうか安らかにお休みください。
                             2006年11月11日  立命館大学 木野 茂







2005年4月以降の近況(2005.12.23)  木野 茂

市大の授業
 前期:新生「科学と社会」(木曜2時限、822教室)
    ゲスト(ボランティア):二木洋子さん、花井十伍さん、四宮充普さん
    120人でディベート大会とディスカッション大会
    創作討論劇も好評
 後期:「ドキュメンタリー・環境と生命」(木曜2時限、822教室)
    ゲスト(ボランティア):坂本美代子さんと小笹恵さん
    40人で、学生の希望を取り入れ、グループ・ディスカッションも混ぜる。
    新作3本も好評だった。

立命館大学での授業
    今年は免除だったが、来年からは週3コマやることが義務に。
    既存の「現代環境論」「科学的なものの見方・考え方」をいくつかと、集中講義を一つ、
    さらにオンデマンド授業(早大主導の全国ネット)を一つの予定。

立命館大学(7月1日着任)での本務
    大学教育開発・支援センターでいわゆるFD活動に関する調査・研究と企画・運営
    授業がないけど、週に3日か4日は衣笠キャンパスに通っています。
    片道1時間半から2時間の小旅行です。
    個人研究室は夏休み中に何とか整理でき、パソコン環境も整いました。
    大学コンソーシアム京都をはじめ、京滋地域の大学関係との付き合いが増えました。

アスベスト問題
    立命館着任直後、毎日へのコメントを契機に取材が殺到。夏休み中は連日のように追い掛け回されました。
    TVの録画インタビューは新聞の取材に比べると要領がよかった。
      (7.14.ABC報道ステーション、7.23.YTV朝の報道特集、12.21.NHK京都ニュース特集)
    来年1月にアスベスト新法が国会に出されるので、衆議院から「企業と行政の責任」について意見書を求められています。正月の宿題とはきつい!!

水俣病問題
    HPやメールで知っているように、こちらは山中さんが大活躍。

その他
    川崎さんが言い出した私の退職記念水俣ツアーは8.11から8.15までの日程で、水俣・御所浦島へ行って来ました。原田先生も参加してくれました。

    自主ゼミは結局出来ませんでした。「科学と社会」の学生に通信ゼミを呼びかけましたが、不発に終わりました。来年は立命の授業もあるので、もう無理でしょうね。




 石綿対策関係法律(アスベスト新法)が第164回国会で審議された際に、衆議院調査局環境調査室から審議の参考資料に有識者の見解を集録したいとのことで原稿執筆を依頼されました。

アスベストの健康被害に対する企業と行政の責任

                         木野 茂(立命館大学 大学教育開発・支援センター教授)

1.企業の責任
 一般に企業が有害物質等を取り扱う場合、作業に携わる労働者の健康を守る義務があり、そのための企業の責務が労働基準法をはじめとした各種法令等で定められている。アスベストの場合も各種の法令や規則等で、労働者の健康被害を予防するための対策が定められており、もし業務に起因した疾病が発生した場合には労働者災害補償保険法で補償の給付が行われることになっている。
 アスベスト粉じんが石綿肺を引き起こすことは戦前から知られているが、発がん性についても1972年にILO(国際労働機関)やWHO(世界保健機関)で問題になっていたことは少なくともアスベストを扱う主要企業は熟知していたはずである。当時、日本は全面禁止ではなく安全対策を強化して使用を続けるという管理使用の立場であったから、アスベストを使用する企業が率先して自ら積極的に安全対策を講じ、被害の予防に努めることが前提であった。
 企業としては、労働者の中にアスベスト被害が発生したときは直ちに労災を申請し、救済を図ることは最低限の義務であるが、今後は潜伏期を経て発症する労働者の被害が増加することが必至であるから、働いていた労働者に対してアスベストの危険性についての情報を提供し、アスベスト検診をいつでも受けられるようにする必要である。
 また、工場等から外へ有害物質を放出して住民に健康被害を及ぼすことは「公害」として厳しく責任を問われることも1967年の公害対策基本法以後、周知しているはずである。近隣の住民や労働者の家族からもアスベスト被害が発生することは海外の例からも明らかであるから、アスベストの飛散がなかったことを立証できない限り、企業は近隣住民や労働者家族のアスベスト被害について因果関係を否定すべきではない。
 さらに、今後、アスベスト建材をはじめ各種のアスベスト使用物の処理に伴うアスベストの飛散が懸念されるのであるから、アスベスト関連企業はそれらの実態把握と撤去・飛散防止対策についても技術的・経済的な協力を進んで行うことが企業の社会的責任として要請される。


2.行政の責任
 今回のアスベスト問題における行政の責任は大変重いと言わざるを得ない。
 少なくともILOとWHOの専門家会議がアスベストの発がん性を指摘した1972年頃には、旧労働省も旧環境庁もアスベストの発がん性や中皮腫発生の事実を把握していたのであるから、すみやかにアスベストの危険性を関係者に周知させ、取り扱い事業所の実態調査を行うとともに、使用規制を開始すべきであった。
 しかし、アスベストを取り扱う労働者にさえその危険性が周知されたことはほとんどなく、また、取り扱い事業所の労働環境や健康調査に関する本格的な実態調査が1972年以後一度も組織されたことがないのは驚くべきことである。さらに、使用の規制に関しては、1975年に吹き付け作業を原則禁止としただけで、クロシドライトとアモサイトの製造・使用禁止は1995年まで行われなかった。厚生労働省が昨年8月の検証報告でも認めているように、イギリスやドイツ、フランス、EUにおける規制に比べれば、日本の規制が国際的にも遅れていたことは明白である。
 世界最大のアスベスト消費国であるアメリカでは製造・使用の禁止こそ行われなかったものの、1970年代後半からアスベスト被害による訴訟が相継ぎ、アスベスト問題が社会的パニックに発展したため、1980年以降は消費量が激減した。それに引き換え、日本の輸入量は1970年から1990年代前半までほとんど変わっていない。1986年にアメリカの空母ミッドウエーが横須賀で起こしたアスベスト投棄事件は、厳しい管理規制が敷かれていたアメリカと規制のゆるい日本の管理行政の差を象徴する事件であった。
 一方、労働者の職業曝露だけでなく、家庭内曝露や工場近隣曝露によっても中皮腫が発生していることは、旧環境庁が1972年の海外文献調査で把握していたにもかかわらず、職業曝露に比べればリスクは著しく小さいとして放置してきた。これが現在のクボタをはじめとする近隣住民にまでアスベスト被害を広げた原因である。アスベストの環境大気中への排出規制は環境省の検証報告にもあるように、アメリカではすでに1975年に実施されているが、日本の大気汚染防止法で排出を規制する改正が行われたのは1988年であり、それもミッドウエー事件をきっかけに学校アスベスト建材で最初のアスベスト・パニックが起こったためである。
 このように、昨年6月から明るみに出たアスベスト問題は第二次アスベスト・パニックともいうべきもので、二度にわたるアスベスト・パニック自体が国のアスベスト規制の遅れと国の監督行政の怠慢を示している。その認識の上に立って、今、国が行うべきことは、被害の実態を明らかにすることと被害者の速やかな救済、そして今後の被害の拡大防止である。


3.アスベスト対策
 現在、クボタを除いて、アスベスト関連企業はアスベスト被害の実態把握と被害者の救済に協力的とは言えない。一方、国の方も昨年の検証で認めたのは関係省庁間の連携不足だけであり、今回のアスベスト新法をはじめ各省庁の対策もこれまでの反省を生かしたものとは思えない。
 まず、クボタに関しては、被害者からの訴えがあったからとはいえ、昨年6月29日に労働者及び近隣住民にアスベスト疾患が多発していることと、近隣住民に見舞金・弔慰金を支給することを発表した。さらに住民補償については、昨年12月25日、「アスベストの危険性の認識のないまま使用していた事業者の道義的責任」を認め、社員と差を付けない補償を検討することを表明した。これはアスベスト関連企業が社会的責任を果たすモデルとして大いに歓迎すべきことであり、他のアスベスト関連企業はもちろんのこと、他の公害や労災を起こした企業も見習うべき対応である。
 クボタに比べ、他のアスベスト関連企業は行政が補償に関する基準や枠組みを作ってくれることを待っているようであるが、その前にすべきことは各社がクボタにならって操業実態や労災実態をはじめアスベストに関する資料を積極的に情報公開することである。
 また、各省庁も行政が把握しているアスベストに関する情報をまず公開し、事実にもとづいて過去の対応を検証し直し、その教訓を今後の対策に活かすことが必要である。私は、かって大阪で起こったマンガン中毒事件で旧特定化学物質等障害予防規則の定めた特殊健康診断や作業環境測定がほとんど行われていないことを知ったが、これに対し大阪労働基準局は今後は予防監督行政に徹すると約束したことがある。1975年のことであり、もしこの教訓がアスベストに活かされていれば現在のような深刻なアスベスト問題にはならなかったはずである。
 例えばアスベストでは、1960年のじん肺法でじん肺検診の実施が、1971年の旧特化則で気中濃度測定の実施とマスク等の備え付けが、1972年の労働安全衛生法で局所排気装置の定期自主検査や職長等に対する安全衛生教育が、1975年の特化則改正で作業環境記録及び健康診断結果の保存期間の延長(30年)が定められたのであるから、厚生労働省が所持している資料を公開すれば、それにもとづいて今後のアスベスト対策を実効のあるものとすることが出来るはずである。


4.被害者の救済
 アスベスト被害の労働者に対する補償は労災保険で行われるが、住民に対する補償は今のところ企業の自主的な対応に任されている。
 環境省は今回のクボタの発表以後、公害健康被害補償法の適用は不可能とし、公害と認めない立場を取っているが、アスベスト工場の近隣住民にこれだけのアスベスト疾患が出ている状況はまさにアスベスト公害というべきである。環境省が公健法を理由に公害と認めないという姿勢は、旧環境庁が1978年に窒素酸化物の環境基準を大幅に緩和したときや、1988年に公健法の第一種地域指定(大気汚染)を全面解除したときと同じで、公害と認めないことによって公害を少なく見せようとするものと言わざるを得ない。現在の公健法を適用できないとするのであれば、近隣住民の被害をアスベスト公害として救済できるように改正するのが環境省の責務であろう。
 今回提出された「アスベスト新法」の趣旨が省庁間の連携不足で救済されない被害者を隙間なく救済しようとすることについては大いに評価する。しかし、法案の内容はアスベスト被害者に対する補償という観点が完全に抜け落ちており、これでは加害・被害の因果関係をあいまいにするものと言わざるを得ない。もとより補償金は因果関係を前提にしたものであるから、その費用は加害企業が負担すべきものである。ただし、企業が担いきれない場合や責任を引き継ぐべき企業がない場合は、法案にある基金からの拠出によるしかないが、その費用はこれまでの責任にかんがみて国も拠出する必要がある。
 新法の救済給付の案は、水俣病の未認定患者に対する給付策に酷似している。水俣病は1956年に公式発見され、公健法の第二種(水質汚濁)として地域指定された公害であるが、行政認定されない患者が1万人以上にも上り、訴訟も長期化した。これに対し、政府は1995年に260万円の一時金と医療費等で和解に持ち込み、解決を図った。しかし、一昨年の関西訴訟の最高裁判決が国の認定基準を採用せず、ほとんどの原告を水俣病と認定したため、いまや3000人以上もの新たな認定申請が相次いでいる。これに対し、国は医療費の支給のみで対応しているため、新たな訴訟まで始まった。まさに水俣病はいまだに終わっていない。公害として認定せず、低額の一時金や医療費だけで対応するならば、水俣病の二の舞を踏むのは必至である。行政は被害者の救済を遅らせてはならない。






神戸新聞 編集委員インタビュー(05.10.31)
 深刻さを増すアスベスト(石綿)問題。大手機械メーカー「クボタ」旧神崎工場(尼崎市)の元従業員や周辺住民の健康被害が発覚して以来、国がようやく本格的な対応を始めている。労災補償の対象にならない住民などを救済する新法の骨格も明らかになったが、対策の不備も指摘される。水俣病などの公害問題に長年取り組んできた木野茂・立命館大学教授は「アスベスト被害を公害と認定しないのはおかしい」と国の姿勢を批判する。 (松岡 健)

アスベスト被害対策の問題点は? 立命館大学教授 木野茂さん

<見出し>
公害として救済すべき
建材の調査と
飛散防止策を

 −アスベスト新法の骨格など、政府の救済策が示されてきた。
 「問題が残っている。まずアスベストを扱った労働者や元労働者への周知が徹底されていない。新法ができても、被害者本人が知らないまま放置され、潜在患者になってしまう恐れがある。また新法は、労災補償では救えない住民や労働者の家族も対象としているが、アスベスト被害は一定の地域的な広がりがあるのだから、大気汚染と同様に公害として扱うべき。本来は、公健法(公害健康被害の補償等に関する法律)の対象にしなければならない」


 −環境省は、公害認定には前向きではない。
 「今回の問題が発覚した直後から『公健法の適用外』とした環境省の姿勢は疑問。水俣病事件では、昨年の関西訴訟最高裁判決で国の患者認定基準が採用されず、(より幅広い認定を求める)原告側の主張が通った。にもかかわらず環境省は基準を見直そうとしない。それを見ただけでも、被害者を救済すべき役所が切り捨てる側に回ってきたことが分かる」


 −クボタの件が明らかになる以前の国の姿勢はどうだったのか。
 「1972年の海外文献調査で、当時の環境庁は、英国のアスベスト工場の周辺住民に健康被害が起きていることをつかんでいた。それなのに、危険性が少ないと判断したことは大失態だ。規制策では日本と大差がない米国では、70年代から80年代にかけてアスベストの利用が激減している。使用禁止までいかなくとも、規制の実効を挙げることが可能だったことを示している。日本でも、危険性についての情報を正確に提供し、省令で定めた作業環境測定や健康診断を守らせていれば、できたはずだ」


 −当時の環境庁は、省に格上げされたが。
 「環境行政が変わったとは思えない。アスベスト被害を公害と認めようとせず、うまい逃げ道をつくろうとしているように見える。経済との調和を優先する姿勢は70年代から同じだ。(実質的な初代環境庁長官の)大石武一さんは『迅速な救済こそが公健法の趣旨』という姿勢で水俣病患者に対応した。その後、環境庁は公害認定の基準を厳しくし、救済を滞らせてしまったが、環境省は大石さんの考え方を見習ってほしい」


 −厚生労働省がすべきことは。
 「労災にならない元労働者らに、新法で柔軟に対応しようとしている点は良いと思う。だが、以前の職場でアスベストを吸った事実がはっきりしない人もいる。省令では、アスベストに関する事業所の作業環境や健康診断のデータを30年間保管するように定めている。これを基に職場での管理実態などを調べる必要がある」


 −アスベストは工場外にもあふれている。
 「私たちの身の回りでは、リスクの高いもの、特に建材をなんとかしなければならない=
。公共施設での調査、撤去などが急がれるが、民間の建築物のアスベストも心配。しかし現状調査や解体時のアスベスト飛散防止には費用がかかるので、その補助制度も必要だ。アスベストによる健康被害は潜伏期間が長いため、対策も長期間にわたる。例えば希望する住民に自治体などが『健康手帳』のようなものを交付し、定期的に検診費用を補助したり、経過を記録していけばいい」

《身の回りのアスベスト対策》
・リスクの高いものから対策を急ぐ。
・最大の問題はアスベスト使用建材だ。
・公共的施設を最優先に調査し、撤去する。
・民間の建物にも調査と、解体・改修時の飛散防止措置の義務付け。
・上記費用の補助制度も検討すべし。
・その他のアスベスト使用製品は回収を。
(木野茂教授作成)



 −民間などとの連携については。
 「アスベスト関連企業は、被害補償の負担はもちろんだが、環境対策や調査に技術的な協力もしてほしい。企業は、行政よりアスベストに関するノウハウを蓄積しているはずだ。またクボタの発表は、長年この問題に取り組んできた民間の団体による活動の結果。早期救済、被害拡大防止を図るつもりなら、行政は、被害実態をよく知っているこうした人たちの協力を得ることが大切だ」

キーワード:公害と労災職業病
 公害の被害者は住民、労災職業病の被害者は労働者という違いがある。また公害の規制法が公害対策基本法、所管が環境省などであるのに対し、労災職業病の規制法は労働安全規制法、所管は厚生労働省など−と区別されている。公健法で公害患者と認定されると、療養費や障害補償費などの補償給付がある。1988年、尼崎市や神戸市を含む第一種地域(大気汚染による公害地域)の指定が解除され、水俣病やイタイイタイ病を対象とする第二種地域だけになった。


写真キャプション
:長年の公害研究の経験から「実態調査こそ重要」と訴える木野茂さん。「住民被害と工場との因果関係を、早く公的に認めるべきだ」とも=京都市北区、立命館大


きの・しげる
1941年、大阪市生まれ。大阪市立大大学院理学研究科修了。同大助教授などを経て、今年7月、立命館大教授に着任。71年から公害調査と被害者支援に取り組む。専門は環境論、大学教育学。著書に「新版 環境と人間〜公害に学ぶ」(編著)、「新・水俣まんだら〜チッソ水俣病関西訴訟の患者たち」(共著)など。






☆★水俣病関西訴訟の最高裁判決(04.10.15)からちょうど1年が経ちました。【05.10.17】

 その後、申請患者の急増と政府の対応のまずさもあって、患者救済問題は混迷を深めていますが、最高裁判決の当事者である関西の患者たちがその後どうなったかは、ほとんど報じられていません。

 私は関西の水俣病患者の聞き書きをまとめたことから、その後に注目していますが、最近、関西の患者の中から新たな動きが出ています。

 一つは、原告の坂本美代子さんが勝訴原告に交付された医療手帳を返却されたことです。認定を求めて22年間も裁判を闘ってきたのに、こんなものでごまかされないとあくまで患者としての認定を求めるためです。

 もう一つは、初代原告団長だった故岩本夏義さんの長女である小笹恵さんがついに認定申請に踏み切られたことです。恵さんは申請の過程で初めて両親の申請が死後失効していることを知り、これにも強く抗議されています。

 ところで、私は大学授業の中でも水俣病など公害問題を常に取り上げ、若い学生たちに伝えることをライフワークともしています。

 そこで、10月20日に大阪市大で行う授業の中で、坂本美代子さんと小笹恵さんを招いて、学生たちと一緒に話を聞く機会を設けました。翌21日には甲南女子高校でも同じような取り組みが行われます。






京都新聞(2005.9.9)6面(オピニオン・解説)「論考」欄

◆拡大するアスベスト被害−有効な防止策と救済新法を

 アスベスト(石綿)被害が日本各地で相次いで明らかになった。対応する新法の動きもある。木野茂立命館大教授(環境論)が問題の根本を見つめ直す。
       ◇  ◇
 最近、急にアスベスト問題がクローズアップされ、衆議院選挙直前に政府もアスベスト新法制定の方針を決めた。
 ところで、アスベストの発がん性は一九七二年にILO(国際労働機関)とWHO(世界保健機関)が指摘し、旧労働省も石綿の吹き付け作業を禁止するなど、七五年に対策を強化した。三十年も前のことである。
 さらに、労働者の中から肺がんや中皮腫が発生していることも同時期に報告され、石綿による労災認定基準も七八年に肺がんまたは中皮腫と明示された。
 このアスベストが今になって急に注目を浴びるきっかけとなったのは六月二十九日のクボタの発表である。旧神崎工場の労働者七十八人が石綿被害で死亡、付近の住民五人にも中皮腫が発生したとの発表は二つの大きな問題を提起した。
 第一は死亡者数が最近になって急上昇していることである。原因は肺がんや中皮腫が二十年|五十年の長い潜伏期を持っているためだが、日本では石綿に関する規制が欧米諸国に比べて遅れたことも輪をかけている。石綿を大量に輸入した七〇年から九〇年のころの被害が今後増え続けることは間違いない。
 アスベストは熱や磨耗(まもう)・腐食に強い便利な物質であったため、建材をはじめさまざまな用途に使われてきた。しかし、発がんの危険性から青石綿の使用が八六年にILO条約で禁止されたにもかかわらず、政府は九五年まで放置した。行政の不作為が問われる所以(ゆえん)である。
 第二は被害が労働者だけでなく住民にも広がっている点である。旧環境庁は七二年以後、海外文献調査で近隣住民にも中皮腫が発生していることを把握していたが、職業暴露に比べればリスクは著しく小さいとして放置してきた。しかも、クボタの発表後も、環境省は公害と認定しない姿勢を表明し続けた。
 思えば、かつて七八年に窒素酸化物の環境基準を大幅緩和し、八八年には大気汚染による公害を地域指定から外し、昨年は水俣病の認定基準を否定する判決が確定したにもかかわらずいまだに変えようとしないなど、環境省は本当に国民の健康を守る気があるのかと言わざるを得ない。
 先月二十六日、政府は関係閣僚会議で国の過去の対応についての検証をまとめ、発表した。しかし、反省は省庁間の連携不足だけである。この検証の限界は、対応の結果を追跡していないことにある。例えば厚生労働省は石綿を使用する際の管理規制を強化する方向で対応したとするが、規制が現場で実行されていたかを検証していない。七五年の省令で作業環境測定や健康診断の記録の保存を三十年間としたのだから、記録から当時の実態を明らかにすべきだ。
 私が調べたマンガン粉じんの事例では、同じころ大半の工場が法令違反を繰り返していたばかりか、罰則さえ課せられていなかった。もちろん被害は工場の内外に及んでいたが、住民は救済されなかった。
 今後、アスベストの被害も対策も長期にわたることを覚悟しなければならない。アスベスト新法の制定を選挙のための公約に終わらせてはならず、被害者の救済と被害拡大防止のために真に有効な法律にしなければならない。そのためには長年この問題に取り組んできた民間の人たちの協力を得ることが重要である。長い間、国が放置し、マスコミも無視してきたなかで、クボタの発表を引き出したのはその人がいたからである。

立命館大教授 木野茂(きの・しげる)氏
 一九四一年大阪市生まれ。大阪市立大大学院理学研究科修士終了、七一年から公害調査と被害者支援に取り組む。今年七月から立命館大大学教育開発・支援センター教授。著書に「新版 環境と人間―公害に学ぶ」(編著)など。









【アスベスト事件についての私的メモ】 ← 恥ずかしながら、お役に立てば幸いです【05.7.26】。

1.被害者の救済

ア.労働者の被害:厚生労働省(関係省庁が協力すること)
(1)労災申請者の認定
  :時効を死亡時からではなくアスベストとの因果関係を知ったときからにすべき。対象業種を狭くしないで可能性のあるものまで広げること。
(2)アスベスト被曝の恐れのある現・元労働者の実態把握と情報提供
  :アスベスト関連職場で働いている/働いていた労働者を把握し、アスベスト被害と労災申請についての情報を知らせておくこと。
(3)すでに会社がなくなっている元労働者や一時雇用の労働者に対する広報
  :アスベスト被曝労働者の被害に関する情報を広く周知させ、労災に関する相談窓口を整備する。

イ.住民の被害:自治体、環境省(関係省庁の協力を得ること)
(1)環境省はすみやかにアスベスト被害が工場周辺住民に及んでいることを認め、アスベスト公害の認定を行うこと。公害認定は住民の被害補償のために不可欠である。これまで放置してきた行政の責任にかんがみて、付近住民の検診等にかかわる予算を確保すること。
(2)労災認定者を出した工場等については、アスベスト被曝の可能性のある現在及び過去の住民にアスベスト健康手帳(仮称)を発行し、希望者には随時アスベスト検診費用を補助する。
(3)付近住民からアスベスト検診の要望が出ている地域では、直ちに自治体が中心となって周辺住民の検診を行う。検診医や委員の専任にあたっては住民の推薦する人がいる場合は必ず入れるべし。

2.今も残る施設や設備からのアスベストの除去

ア.学校・公共施設等の再調査で見つかったものについてはアスベストの除去を原則とし、すぐに出来ない場合は除去までの対策(封じ込め、施設閉鎖等)を明示し、それまでの安全性について関係者によく説明し、了解を得ること。

イ.民間の建造物の改築や解体にあたってはアスベストの調査を義務付け、アスベスト建材等がある場合は飛散防止の対策を命じること。

ウ.使用中の民間建造物にはアスベストの調査を勧告し、見つかった建材等の除去にかかる費用を補助する制度を作るべし。

エ.除去したアスベストの処理・管理状態については情報を開示し、不安を取り除くこと。

3.一般の市民に対する対策

ア.アスベスト被曝が不明だが中皮腫等に罹患または死亡した人について因果関係を調べてもらいたい市民のために相談窓口を自治体に設けておく。

イ.喫煙が罹患率を高めることを周知させ、不安のある人は喫煙を止めるよう呼びかけること。



→ 工場の中では労働災害や職業病が多発し、工場の外では公害・環境問題が発生する悲しい事態…。
 大阪府大東市で起きた植田マンガン事件
(法定の健診を受けていたのに、検査結果が生かされず、マンガン中毒になってしまった労働者達が、工場主と労働省を提訴)では、大阪地裁判決で原告が勝訴♪したものの、上級審では労働省の責任が免罪されたのでした。
 また、周辺住民の健康被害については、大阪府の調査の末、「断定できないから、今後も調査研究が必要」とされ、そのまま、現在に至っています。【2005.8.8追加】




恥ずかしながら、木野が紹介されているホームページ

☆「大学授業ネットワーク
:各大学のさまざまな教育や授業の実践を伝える京都大学高等教育研究開発推進センターのホームページで、「ドキュメンタリー・環境と生命」の授業の様子も見ることができます(ただ、よく行方不明になります)。

★財団法人大学コンソーシアム京都主催 第10回FDフォーラム「評価される大学教育」
:木野がシンポジストの一人でした。開催要項はココです(終了済みですが…)。当日資料、参加者からの質問に対する総括回答はココから入ってください。


木野の新刊

『大学授業改善の手引き―双方向型授業への誘い』 2005年2月,京都の老舗・ナカニシヤ出版より刊行♪

<内 容>
教師も学生も満足できる新しい授業実践とは…
大学教育を詳細に考察、学生と教師が一緒に授業を展開していく双方向型授業を提案する♪

<目 次>
はじめに
第1章 大学授業の行き詰まりと新教育課程
 1.1 大学授業の行き詰まり
 1.2 「大綱化」と新教育課程

第2章 授業は果たして良くなったのか?
 2.1 新教育課程における授業改善の方策
 2.2 個々の授業に対する学生の評価

第3章 授業改善の工夫と双方向型授業の勧め
 3.1 授業改善の工夫
 3.2 双方向型授業の勧め

第4章 文系向けの体験型自然系授業 ― 「実験で知る自然の世界」
 4.1 開講の経緯と授業計画・受講状況
 4.2 私の担当実験―「放射線を測る」
 4.3 授業に対する学生の反応

第5章 講義型授業でどこまで双方向にできるか ― 「公害と科学」
 5.1 この授業の様々な工夫
 5.2 学生との双方向の歩み

第6章 集中講義で双方向型の多様な試み ― 「科学と社会」
 6.1 開講の経緯と第1期の授業
 6.2 第2期の「科学と社会」
 6.3 学生たちの反応から

第7章 1回生でも初めての論文に挑戦 ― 「人間と科学 演習」
 7.1 開講の経緯と第1期セミナー
 7.2 第2期以降のセミナー

第8章 映像とメールを活用 ― 「ドキュメンタリー・環境と生命」
 8.1 テレビ・ドキュメンタリーを授業に
 8.2 受講生の反応


 あとがき
 参考文献
 索  引


 



「科学と社会」  Science and Society

2004年度まで、この科目は夏期集中講義でした。
今は、前期木曜の昼2:40〜、全学共通教育棟822教室で開講されます。


●科目の主題と目標
 現代の科学は20世紀に驚異的な発達を遂げ、私たちの生活を大きく変えた。この科目の主題は、その科学が社会や人間とどうかかわっているのかを考えることである。
 この授業では単に知識を得るだけではなく、自分で考えるきっかけにしてほしいと願っている。そのため、講義では一般論にとどまらず、主として環境問題をめぐる私の具体的な経験を交えながら、一緒に考えていきたい。
 一般に総合教育科目は受け身の受講になりがちだが、この授業では授業への積極的な参加を促すため、次のような工夫を凝らしている。
@授業を分かりやすく(スライドやビデオを使用)
A授業を興味深く(ホットな問題を取り上げる)
B授業を双方向に(コミュニケーションを重視)


●授業内容・授業計画
 今期の授業日程はとりあえず以下の通りとします。「とりあえず」と断ったのは、ゲストの二木洋子さんと花井十伍さんと四宮充普さんは多忙な方々ですので、日程が急遽変わることもあるからです。
 シラバスと順番等、少し違いますから注意してください。
 さあ、今日からわずか3ヶ月間ですが、頑張ってついて来て下さいね。

【2008年度】
4.10 アスベスト
4.17 公害の原点・水俣病
4.24 水俣病は終わっていない
5. 1 地球環境問題/チーム分け
5. 8 (振替授業日のため休講。火曜日の授業が実施されるらしい)
5.15 二木洋子さん「環境問題と行政」個人HP(「いきいき日誌」がおもしろい)
5.22 チーム・ミーティング
5.29 チーム・ディベート大会
6. 5 花井十伍さん「薬害エイズは、今?」ご連絡はネットワーク・医療と人権HPから!
6.12 公害と労災職業病
6.19 原子力の光と影1
6.26 原子力の光と影2
7. 3 四宮充普さん「薬害を防いだ労働者」
7.10 環境問題と差別

7.17 専門家の役割

【2007年度】
4月12日「アスベスト」
4月19日「公害の原点・水俣病」
4月26日「水俣病は終っていない」
5月3日「休講:祝日のため」
5月10日「公害と労災職業病」→「休講」
5月17日「花井十伍さん:薬害エイズは、今?」
5月24日「チーム・ミーティング」
5月31日「(続)チーム・ミーティング」
6月7日「二木洋子さん:環境問題と行政」
6月14日「チーム・ディベート大会」
6月21日「原子力の光と影」
6月28日「四宮充普さん:薬害を防いだ労働者」
7月5日「公害と労災職業病」
7月12日「環境問題と差別」
7月19日「環境問題と専門家の役割」

【2006年度】
4/13 私の原点
4/20 水俣病:公害の原点
4/27 水俣病は終わっていない
5/ 4 (休日・休講)
5/11 公害と労災職業病
5/18 ゲスト:二木洋子さん「環境問題と行政」
5/25 原子力の光と影
5/30 (振替日・休講)
6/ 1 (創立記念日・休講)
6/ 8 環境と科学/チーム・ミーティング
6/15 チーム・ディベート大会
6/22 ゲスト:花井十伍さん「薬害エイズは今・・・」
6/29 環境問題と差別
7/ 6 ディスカッション:危険な知識の探求や技術開発をめぐって
7/13 ゲスト:四宮充普さん「薬害を防いだ労働者」
7/20 環境問題と専門家の役割


【2005年度】
4/ 7 私の原点
4/14 水俣病:公害の原点と言われる理由は何か
4/21 水俣病は終わっていない
4/28 環境と科学:「沈黙の春」「複合汚染」「限界を超えて」 → 公害と労災職業病:工場の内と外の違いだけか に変更
5/12 ゲスト:二木洋子さん「公害と行政」
5/19 公害と労災職業病:工場の内と外の違いだけか → 環境と科学:「沈黙の春」「複合汚染」「限界を超えて」 に変更。
5/26 原子力の光と影:平和利用の言葉の陰にあるもの
6/ 2 ディスカッション:エネルギーと人間
6/ 9 ゲスト:花井十伍さん「薬害エイズは今・・・」
6/16 環境問題と差別:創作討論劇を通して考える
6/23 戦争と科学:危険な知識の探求や技術開発をめぐって
6/30 ビデオ講義:北野静雄さん「薬害を防いだ労働者」 → 薬害を防いだ大鵬労組の現在の委員長・四宮さんに変更
7/ 7 専門家の責任
7/14 レポート提出大会

●評価方法
 レポート評価8、授業参加度2で総合評価する。レポートは自力で何かをつかんだと認められるものを高 く評価する。授業参加度はコミュニケーション等への参加度で評価する。

●受講者へのコメント
 私は02年まで理学部、04年まで大学教育研究センターの教員であったが、以前から、大学の授業は教員の一方的な講義で終わってはならないと考え、双方向型授業を目指してきた。その基本は、教員と受講生および受講生同士のコミュニケーションである。そのためにこの授業で工夫していることは以下の通りである。
@同じ目線で顔の見える授業(授業は講演会と違ってクラスの親近感が大切なので、過大クラスにしない)
A授業週刊紙の発行(授業用参考資料と意見交換の場「Communication Space」から成る「週刊・科学と社会」を毎回発行する)
Bコミュニケーションの重視(授業の後、「なんでもメール」で意見を募り、授業週刊紙に編集して掲載。他に、時間外に皆で懇談できる機会も設けたい。)
 参考までに以前の受講生の感想を紹介しておく。
「この授業には来る度に何か気づかされたり、考えさせられたりした。授業が終わっても今後ずっと考えていかなくてはならないと思った。」(L1)
「先生からのメッセージ、"自分で考えて下さい"、絶対に頭の中に入れておきます。短い間でしたが、1つ1つの授業+α、自分の目で確かめ、頭で考えること。一番大切なことを学べました。」(M1)
関連科目:「ドキュメンタリー・環境と生命」(後期開講)

●教 材
教科書:木野茂編『新版 環境と人間−公害に学ぶ』(東京教学社)。
参考文献やビデオは学術情報総合センターに多数揃えてもらっているので、自由に利用すること。









      「ドキュメンタリー・環境と生命」 Documentary・Environment and Life

●科目の主題と目標
 現代の自然科学と人間の関わりの中でも、環境と生命は人々から大きな関心をもたれているテーマであり、本学でも総合教育科目AやBで関連した科目がいくつも開講されている。
 ところで、この種のテーマではドキュメンタリー(映像記録)が授業の極めて有効な素材であるが、セメスターの時間数との関係で、講義の補助的な説明に使うのが精一杯である。
一方、現代の学生は様々な媒体による膨大な情報に囲まれているが、その中から必要な情報を得ることに慣れていない。ドキュメンタリーはその貴重な情報の一つである。
 そこで、本科目は他の講義主体科目との相補的なアプローチを目指して、ドキュメンタリーの鑑賞をメインに展開する。もちろん、単なる鑑賞で終わるのではなく、そのドキュメンタリーから問題を読み取り、場合によっては批判的な考察も含めて、自分の考えをまとめることが目的である。
 参考までに、昨年取り上げたテーマは、日野原重明、水俣病、薬害ヤコブ病、SARS、地球家族、湯布院、西成こどもの里、大平光代、生命の誕生、サリドマイド、ハンセン病、戦争と難民などである。

●受講上の注意
 この科目を受講する人は学情または自分のパソコンでEメール(携帯メールは不可)及びホームページ閲覧ができるようになっておくこと。

●授業内容・授業計画
 授業では、毎回、最初に45分〜60分程度のテレビ・ドキュメンタリーを鑑賞する。
 ドキュメンタリーに関する講義は行なわないが、ドキュメンタリーに関する資料や参考図書・HP等はプリントにして当日配布する。
 鑑賞後、時間一杯、ドキュメンタリーに対する感想や意見を自由に出し合う。授業の後、金曜午後5時までに、教室での意見交換を参考にして自分の意見まとめ、指定のアドレスへメールで提出する。提出されたメールはメーリングリストを使って全員に配信される。
 各自、次の授業までに全員の意見を読み、自分以外で最も優れていると思うものを選んで、次回出席時に投票する。最多得票者は教室で表彰する。
 受講生が選んだ意見と私が選んだ意見は科目のホームページ <「ドキュメンタリー・環境と生命」の世界>に掲載する。
2002年度の様子は→ ☆★☆  2003年度は→ ☆★☆ 2004年度は→ ☆★☆ 2005年度は→ ☆★☆  2006年度は→ ☆★☆

●レポート
1. 授業期間中に放送されるTVドキュメンタリーの中から1本を選び、その要旨(400字程度)と自分の意見(400〜600字)をレポートにまとめる。
 → 番組探しは、「生命・環境系の週間テレビ予報 on the Web」が参考になるかも…。
2. 授業で取り上げたドキュメンタリーから1本を選び、教室でのディスカッション及びメーリングリストの意見交換をもとに1000字程度のレポートをまとめる。

●評価方法
 毎週のメール7、ディスカッション1、レポート2、授業への積極度(救済点を兼ねます)1の割合で総合評価する。

●受講者へのコメント
 講義もテキストもないので、ドキュメンタリーとプリントを頼りに自分で調べることが基本になる。何事にも縛られずに自由に学ぶことの楽しさを味わってほしい。
 授業の開始時刻になればすぐに映写を始める。遅れてくると筋書きがわからないので注意すること。
 関連科目:「科学と社会」


●教材
 毎回、プリントを配布する。後は自分で探す。

☆ この科目は大学案内に紹介されています。

○「ドキュメンタリー・環境と生命」早分かり
 *教室でテレビ・ドキュメンタリーを鑑賞する。
 *毎回、ディスカッションの時間がある。
 *みんなの意見をメーリングリストで交換する。
 *優秀意見が科目のホームページに掲載される。
 *授業とインターネットを両方楽しめる。
 *講義のない授業って信じられる?!







木野 茂  きの・しげる
 1941年、大阪市生まれ。1966年、大阪市立大大学院理学研究科修士修了と同時に助手となる。学位は理学博士。同研究科講師を経て、2003年4月から新設された大学教育研究センターに移籍(助教授,副所長)。2005年3月末にて定年退職。同年7月より、立命館大学大学教育開発・支援センターに着任(教授)。
 1971年から公害調査と被害者支援に取り組み始め、83年からは同大学自主講座の運営に加わる。
 1994年から自主講座を正規科目化した「公害と科学」などの授業を開講。徐々に増加して、4科目に達する!
編著に
『新版 環境と人間〜公害に学ぶ』(東京教学社)
共著に
『新・水俣まんだら〜チッソ水俣病関西訴訟の患者たち』(緑風出版)
単著に『大学授業改善の手引き〜双方向型授業への誘い』(ナカニシヤ出版)など。

☆★☆「生命・環境系のテレビ番組お知らせサービスのホームページ」は
こちらから