「ドキュメンタリー・環境と生命」2006年度受講生の記録

 ここには、記念すべき第5回から第8回までを掲載しています(2006年12月31日)
1〜4回へ 9〜13回へ「ドキュメンタリー・環境と生命」の部屋へ



今期ドキュメンタリー/授業の予定
1(10/ 5) 「二十歳のあなたへ〜手紙で祝う成人式」(NHK総合,2005.2.4,にんげんドキュメント,45分)
2(10/12) 「ミナマタに生きて〜水俣病公式確認50年」(日本テレビ系,2006.5.21、NNNドキュメント'06、30分)
3(10/19) 「“サリドマイド児”として生きて」(NHK教育,2000.12.01,ドキュメント地球時間,43分)
4(10/26) 「誕生の風景」(NHK総合,2001.3.24,NHKスペシャル,49分)
5(11/ 9) 「津軽 故郷の光の中に」(NHK総合,2002.2.14,にんげんドキュメント,43分)
6(11/16) 「割り箸の証言〜森を見殺しにするな」(テレビ朝日系,2006.8.5,テレメンタリー06,30分)
7(11/30) 「第1回 1分間スピーチ大会」
8(12/ 7) 「カナリアの子供たち〜検証・化学物質過敏症」(日本テレビ系,2006.8.13,NNNドキュメント'06、55分)
9(12/14) 「指先で描く未来予想図〜バリアフリー研究家・福島智」(TBS系,2005.3.27,情熱大陸,30分)
10(12/21) 「あなたはいま幸せですか 地球家族2001」(NHK総合,2001.8.21,60分)
11( 1/11) 「エリオット先生の差別体験授業“青い目 茶色い目”」(NHK教育,2001.5.25,ドキュメント地球時間,43分)
12( 1/18) 「長き戦いの地で〜医師・中村哲」(NHK教育,2001.11.25,60分)
13( 1/25) 「第2回 1分間スピーチ大会」





第5回「津軽・故郷の光の中へ」(NHK総合,2002.2.14,にんげんドキュメント,43分)

要約ベスト(経済学部3回生・土田将志)
 故郷に想いを馳せた60年、ようやく果たすことができた帰郷。元ハンセン病患者の桜井哲夫(本名:長峰利造)さんは、13歳で発病し、17歳のときに国の隔離政策により故郷を離れ、国立療養所栗生楽泉園に入園した。以後60年間、故郷へ戻ることは許されなかった。2001年5月11日、熊本地裁ハンセン病訴訟判決で、原告側が勝訴。同年、県知事の公式面会と謝罪があり、念願の帰郷を果たすことができた。そして、実家で唯一桜井さんの存在を知る義姪の長峰きねさんの決断により、一族に受け入れられることになった。
 肉親と会い、「長峰家の墓に入ってほしい」などの温かい言葉。級友と再会し、ともに校歌を口ずさむ。涙を流す桜井さん。5日間滞在し、60年前と違って喜びだけもって帰る事ができた。しかし、再会からしばらく経ってきねさんが死去。「兄弟が亡くなった時より悲しい…」と桜井さんは言った。
 元ハンセン病患者の苦しみとそれらをすべて洗い流してくれる故郷のすばらしさを感じさせる作品。



投票ベスト[kino-doc:160] 理学部3回生・加藤睦美
 今回の主人公である桜井哲夫さんは両手両足の指・両眼・声帯を失い、60年間という長い間、家族との縁さえも切り、療養所という環境の中で隔離されて過ごしてきた。この境遇を聞いただけで、自分との差があまりに大きすぎて桜井さんの気持ちなど想像することさえできず、ただ胸がいっぱいになった。
 今回印象に残ったことは、桜井さんとキムさんの心のつながりである。身体の障害、年齢、人種が違っていたとしても、こんなに強い絆でつながりあえるんだなと感じた。そしてそのつながりは、苦しみや困難を乗り越える強い力となるのだなと感じた。
 そして今回の桜井さんのようにはいかず、いまだに帰郷を果たしていないハンセン病の患者さんが数多くいるそうですが、多くの問題があるとはわかっているが、少しでも早く多くの人々が帰郷を果たせればと心から思った。



先生選抜1 [kino-doc:149] 経済学部4回生・西村栄樹
 元ハンセン病患者としての桜井哲夫、齢80歳にもなる詩人としての桜井哲夫、故郷・津軽生まれとしての長峰利造。どれも同じ人物なのだが、私は詩人としての桜井哲夫さんに最も惹かれた。その感性の鋭さは、かすれた声からでも十分に分かる。会話や動作一つひとつの中で発せられる言葉には重みがあり、何度も心をうたれた。
 帰郷が決まったとき、「人って不思議だね。本当にうれしい時、悲しいんだね。」と漏らした。園の中にいれば世間の冷たい風にさらされることはない。しかし一歩そこから外に出ればどうだろう。確かに故郷のにおいを60年ぶりに味わったり、長峰きねさんやチョンミさんのような家族のありがたみを知ることでもできる。けれどまた別の悩みを抱えて生きていかねばならないことになる。私は患者を隔離することの是非を今一度考えさせられた気がした。
 らい予防法の違憲判決が出て、一応は問題解決に向かったかもしれない。しかし、帰郷を果たせず、同じ墓に入れられることのない患者がまだ多くいることを私たちは忘れてはならない。「指を奪った『らい』に/指のない手をあわせ/おじぎ草のようにおじぎした」。おじぎしないといけないのは、われわれ国民もではないのか。


先生選抜2 [kino-doc:161] 経済学部3回生・土田将志
 「らいは天の与えたお前の職だ」 桜井さんのお父さんの言ったこの言葉は、息子を愛する父の考え抜いた末の最高の言葉だったと思う。これといった治療法もなく、感染すると考えられていた当時において「ハンセン病」に対する偏見は、今とは比べることができないほど凄まじかっただろう。ハンセン病患者の未来は闇に包まれ、絶望する中で、お父さんの言葉は桜井さんに「存在意義」を与えたものだったと私は思う。これから仕事で苦労することもあるだろうが、職務を全うし、生きていて欲しいという気持ちが強くあったのではないだろうか。
 昨今いじめによって子どもが自殺するという報道がなされている。なぜ「自殺」の道を選ばなければならなかったのだろうか。この2つを比べるのはやや極端な話になるかもしれないが、桜井さんも自殺した子どもたちも「いじめ」を受けてきた。しかし、一方では60年間耐え、もう一方はすぐに命を絶っている。この違いはどこから生まれてくるのかを考えたときに、再びお父さんの言葉の意味が重要になる。
 自らの「存在意義」を見出せるものや場所などを失くしたと感じたときに不幸なことが起きてしまうのでないだろうか。本当の喜びを知ることもできないままに…。
 桜井さんは故郷に帰ることができて本当に良かったと思う。






第6回「割り箸の証言〜森を見殺しにするな〜」(テレビ朝日系,2006.8.5,テレメンタリー06,30分)

要約ベスト(経済学部2回生・野村邦博)
 日本人にとって当たり前についてくるものである割り箸が今危機に瀕している。日本にとって最大の割り箸輸入国中国が割り箸の50%の値上げを決定したのだ。外食産業には大打撃である。私達のランチタイムに国際問題が紛れ込んだ。
 中国では2008年に控える北京オリンピックのために木材がたくさん要り、保水力を持つ森林の伐採のため起こる洪水や砂漠化などのせいで、全体の伐採量の1%の割り箸用木材もが負担となっている。
 日本では安い外国産の木材には対抗できず、林業が衰退してしまっている。伐採できればそれだけ山の木は育ち、環境にも優しいのだが人手が足りず手付かずの状態である。
 切れば切るだけ儲かるが環境破壊が進む中国と、切れば切るだけ損をするため切れず森林の環境悪化が進む日本のお金では割り切れない複雑な問題が割り箸を通して表面化してきている。



投票ベスト [kino-doc:187] 生活科学部1回生・堀口仁子
 後期に入ってから学食の箸が割り箸とプラスチック箸で選べるようになったようですが、それでも割り箸を使っている人がかなり多いことに驚きました。ディスカッションでそのことに触れたら、「それは割り箸が手前に置かれているからではないか」と言われ、妙に納得しました。プラスチックがいやだから割り箸…という人ももちろんいるでしょうが、特に何も考えていない人もかなりいる気がします。これは割り箸問題全体に関して言えることだと思います。
 たとえばコンビニの箸。私なら有料だと言われればその理由も考えずに、無料でつけてくれる店に行ってしまいます。割り箸を選ぶとき、見た目がきれいな(間伐材由来でない)箸を選んでしまいます。また、100均の箸が「事実上値上げ」であっても、言われなければ気づけないと思います。
 「中国が割り箸を値上げした」というニュースは知っていたのに、何がその原因なのか、何が本当に問題なのかわかっていなかったことが恥ずかしいです。ただ、国や企業も、自分たちだけで対応してしまうのではなく、問題をもっと声高に叫んで、世間に喚起を促すべきだと思います。(責任転嫁…?)



先生選抜1 [kino-doc:191] 理学部1回生・井関岳人
 今回のドキュメンタリーで問題とされていたのは、中国では木が切られすぎて災害が起こっており、日本では木を切らなさすぎて山が荒れ果てているという二つのことでした。
 中国政府は森林保護のために割り箸の値上げに踏み切りました。私はこのことは日中両国にとって有効な策だと思います。中国の森林が保護されるのはもちろんですが、日本の林業も再び振興させることができるからです。確かに割り箸の値上げで日本経済に影響はあるかもしれません。しかし、以前から割り箸の使用を押さえる動きがあったので、各企業もそれなりの対策はしていると思います。
 そもそも割り箸は間伐材などを利用して作られていたものなので、中国の企業もそれに習って割り箸のために木を伐採するのではなく、他の用途で使用した木材のあまりを使用連れば、いくらか現状を打開できると思います。
 あと、この番組の題名が、対照的な二カ国の森林のどちらの現状にも当てはまっていて、なかなかよいネーミングだと思います。


先生選抜2 [kino-doc:216] 工学部1回生・能美宏充
 日常生活で何気なく消費していたわりばし。それがいま大きな問題になっていることにはきづきませんでした。わりばしはいまではかかせない存在となっています。しかし、そのわりばしのほとんどが中国のものだということはほとんどの人が知らないと思います。
 日本では多くを消費していますが、それが原因となって、中国では森林破壊がすすんでいます。このことをしったとき多くの日本人はわりばしを使う手が止まると思います。そのときどうしたらよいでしょうか?答えはあまり難しいものではありません。自分ではしを持参したり、たまに食堂でおかれているプラスチック製のはしを使ったりしたらいいのです。そういうことを意識するだけで多くのわりばしを節約できると思います。
 そして、森林破壊をかんがえるのならやはり紙の節約が一番必要だと思います。大学では大量のプリントが配布され、処分されます。大学ではそれを一番考えなければなりません。本当に必要とする学生(*)にだけ配布すべきだと思います。身近なことからこつこつやっていかなければならないと思います。 

 (注by先生)*は原文では生徒でした。なぜ変えたかわかりますか?





第7回は「第一回スピーチ大会」でした♪
厳しい時間制限の中、言葉を選んで思いを話すのは、思ったより大変で、かつ緊張したようです。


第8回「カナリアの子供たち〜検証・化学物質過敏症」(日本テレビ系,2006.8.13,NNNドキュメント'06、55分)

要約ベスト(理学部1回生・田中彩香)
 化学物質過敏症に苦しむ人たちがいる。その対象はほとんどが女性か子どもである。患者たちにとっては、私たちが何の気なしに使用しているワックスや洗剤、シャンプーや防虫剤ですら強い毒物である。
 発症には暴露と呼ばれる原因があり、暴露には「微量の原因物質に長期間さらされる」「一時で大量の原因物質を吸い込む」の2種類が存在する。主な原因物質として今注目を集めているのは有機リン農薬であり、その証明のため、多くの研究がなされている。ただし、現在のところ国は関連性を認めておらず、唯一認めて対策をたてた群馬県は環境省から白い目で見られている。
 また、化学物質過敏症は1度発症してしまうと全快するのは難しい。ごく微量の化学物質でも症状を訴えるようになり、過敏症の対象となる化学物質は多岐に渡る。そういった患者にとっての治療法は化学物質から離れることしかなく、用心しても症状が現れることもしばしばである。
 そういった過敏症に苦しむ子どもたちの姿を通して、国や私たちに呼びかけるVTRである。



投票ベスト [kino-doc:250] 文学部4回生・加藤賢至
 化学物質過敏症を詳しく知ったのは初めてです。詳しく知りたくなって、化学物質過敏症支援センターの情報(http://www.cssc.jp/index.html)を抜粋しました。(配布プリントと重複した発症の特徴は省略します。)↓
 発症までに:化学物質過敏症は何かの化学物質に大量に曝露されたり、または、微量だけれども繰り返し曝露された後に、発症する
 発症原因は:建材・塗料・接着剤といった建築物や家具・殺虫剤・防虫剤・喫煙・有機リン系農薬
 発症者はどれぐらいいるのか:人口に対する患者の割合はアメリカではMCS患者が2%-6%、日本では0.74%‐2.1%(1995年〜2000年)
 発症者の悩み:周囲からの理解が乏しく、患者は生活環境から食事に至るまで気を使わないといけない。
 具体的な予防策:室内空気を汚さないこと、食品の安全性に気を配ること、合成洗剤でなく石鹸を使用すること、住宅の新築・改築・改装に特に注意すること・・・
 以上です。情報が多いので感想を割愛します。
 今日の授業も非常に刺激かつ参考になりました。木野先生有難うございました。



先生選抜1 [kino-doc:252] 商学部1回生・藤原早希
 化学物質過敏症の女の子は、みんなと一緒に旅行に行ったのに、ほとんどみんなと一緒に行動できないでいるシーンが、とても印象に残りました。一緒に来られたという喜びと、一緒にいられない悲しみを同時に味わっている彼女が、かわいそうで仕方ありませんでした。見ていて、「え、あれもあかんの?それもあかんの?」と思うことばかりでした。
 私たちが普段生活していて、何気なく利用する乗り物、場所にも、化学物質過敏症の子供たちを苦しめる物質が空気中に漂っているのです。私はそのことに驚くと同時に、恐怖を覚えました。私が普通だと思っているあらゆる空間に、少なからず人間に害のある物質が含まれているのです。
 ただ、私たちにはそれを感じることができません。だからこそ、化学物質過敏症を理解するのはとても難しいのだと思います。だって、給食の当番着を着るのに、バスや電車に乗るのに、学校の体育館やろうかを歩くのに、化学物質なんて感じたことがないから。
 その点で、化学物質過敏症の子供たちをサポートしていくのは大変なことだけれど、ドキュメンタリーに出てきた小学校の校長先生のように、理解し、手助けする人がたくさんいなければならないと思います。また、農業関係者と協力し合いながら、両者が納得できる解決策を模索していくことが急がれると考えます。


先生選抜2 [kino-doc:256] 経済学部4回生・西村栄樹
 自分の家が農業をやっているので、他人事では済まされないなと思った。しかし住民や学校側の怒りの矛先は、意外にも有機リンの含まれた農薬を使用する農家ではなく、むしろ政府へ強く向けられていたので驚いた。
 厚生労働省のホームページを見ると、シックハウス症候群や化学物質過敏症についての報告は2年前の研究会を最後に途絶えている。そこには今後の課題として@国民への正しい知識の普及啓発、A医療従事者への関心の喚起、B基礎及び臨床的研究の推進の3項目が掲げられているが、最後を「症状が発現することが確認されているが、その原因の詳細な把握や、治療法及び予防法の確立のための更なる研究の推進が必要である。」と締めくくっているように、今後の研究如何で対応を決めていくという、完全に後手に回った回答をしている。事態が起きてからでは遅い。この講義を受けてから何度も思った言葉である。
 しかし、確かな原因がつかめない限り、医師や行政が判断を下せないのも分かる。また農薬だけでなく、我々が普段使用するマジックや石鹸から香水やタバコといったおしゃれアイテムまでが発症者に過敏に反応させてしまう。つまり我々も加害者である。化学物質を遠ざけるほかこれといった治療法は今のところないようだが、周囲の理解や協力があれば政府を動かす原動力になるかもしれないと考えるのは浅はかであろうか。政府と同じく相変わらず後手の考えだが、自分が出来る気遣いをまず始めるしかないと今は思っている。


先生選抜3 [kino-doc:259] 経済学部2回生・野村邦博 
 カナリアってなんなんだと思っていました。見始めて、シックハウス症候群の類かなあと思って見ていると、なにやら学習障害だとか、深刻な話がずらりと並んでいて衝撃を覚えました。農薬を散布するのが悪いだとかの話を抜きにして、いかにこのわれわれが住む環境の一番大事な空気中には有害な物質が飛び交っているのかということを気づかせてくれるものだったと僕は思いました。洗剤も化学合成物質、シャンプーも化学合成物質、床に塗るワックスも化学合成物質、食品にも化学合成物質。この状況で過敏に反応できない私達は、便利さを追求してとうとう自分達の体が蝕まれていることにも気づかないまま楽しく生活していたのですよね。
 この話は別に今日の話から離れたわけではなく、実際農薬を使う農家の考えでは、農薬をまかない事には虫に葉っぱを食いちらかされ、病気におかされ、作物の収穫に多大な影響を及ぼすのです。農薬に過敏に反応するお子さんがいるから、農薬はやめてくれと言われても、その手間をかける義理はあっても義務はありません。こういった利益の裏に潜む損益は数限りなく存在するというか、全ての物事に当てはまります。農薬は劇薬で、インドでは女の人が自殺するときによく飲まれるそうです。そんな劇薬をばらまけば何か起こるだろう。でも何かが何か分からない状況では使い続けるしかないでしょう。これから何かが何か分かってきたら、農薬を手放す日が来るかもしれません。その時農薬が引き起こす悲劇について何も知らない私達はこう言うかもしれません。
 「野菜が高くなった。どうしてくれるんだ。」





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